告知事項と心理的瑕疵について
みなさん、こんにちは。
合同会社アトリ 代表の朝部です。
今回は、物件の検索をした時にたまに見かける「告知事項有り」と書かれている物件の心理的瑕疵についてお話していきたいと思います。
心理的瑕疵とは何か
不動産の世界では「瑕疵」という言葉がよく出てきます。
瑕疵とは「キズ」のような意味で理解して頂ければ間違いないですね。
そして今回の心理的瑕疵ですが、これは地盤や建物に構造上の問題があるものではなく、心理的に嫌悪するような事情を指しております。
具体的には、殺人事件や自死等ですね。事故物件という呼び方をされることもあるので、なんとなく想像は出来るかと思います。
心理的瑕疵を告知するのか
建物内、あるいは敷地内で他殺や自死等があった場合は基本的に買主(借主)に対してその事実を告知しなければなりません。
これは当然ですよね。
世の中には色々な人がいますから、心理的瑕疵も全く気にしない方もいらっしゃるとは思います。しかし、大部分の方は心理的瑕疵のある物件に居住するのは避けたいのではないでしょうか?(私の場合、特にそうです・・・)
この心理的瑕疵の告知義務を怠ると、損害賠償請求される事もあります。
心理的瑕疵ってどんな時?
具体的にどのようなケースが心理的瑕疵に該当するのかは、実は結構曖昧なんです。
従って不動産業者も苦慮するところではありますね。他殺や自死の場合は分かりやすいのですが、それ以外の心理的瑕疵に該当するパターンをいくつか見ていきましょう。
自然死の場合
自然死(孤独死)の場合、基本的には心理的瑕疵には該当しません。意外でしたか?
何故なら、人はいつか必ず死ぬからです。いつか必ず死ぬ人間が居住している不動産ですので、建物内で病死したり最期を自宅で看取るのは当たり前という事なんですね。
最近は自宅で看取るケースというのは減りましたが、当然起こりうる事でしょう。
ただ、例外もあります。
自然死であっても、発見が遅れて遺体の腐敗が進んでしまってるようなケースは心理的瑕疵に該当する可能性が非常に高いです。そして状況によっては、その室内だけの問題ではなくなる事もあります。
実際にあった判例ですが、ある分譲マンションの一室で腐敗の進んだ遺体が見つかったケースです。
玄関ドアを開けた瞬間に、一気に腐敗臭が溢れて別のフロアの室内に臭いが混入してしまった事がありました。エレベーターを伝って臭いが広がったそうです。
このケースの場合、臭いのせいで体調不良になって暫くの間住めないからという理由でホテル代等の損害賠償に発展しました。
最終的には遺体が見つかった部屋の相続人の方が、一ヶ月分のホテル代を支払う事になりました。
風俗店経営の場合
心理的瑕疵は死人が出なくとも該当することがあります。
こちらも分譲マンションで起こった事例の判例です。
あるご夫婦が居住目的で中古のマンションを購入されたのですが、実はその部屋は過去に風俗営業として使われていたことが判明しました。
このケースでは買主の心理的負担が考慮されて心理的瑕疵に該当するとされ損害賠償となりました。
隣に変な人がいる場合
戸建て住宅を購入したご家族のケースです。
戸建て住宅購入後、「子供がうるさいんじゃー!」「追い出したる!覚悟しいや!」等とわめく隣人がおりまして結局引っ越しを断念せざるを得ないということがありました。
この判例では、説明義務違反とされ売買代金の2割が損害賠償として認められました。
心理的瑕疵はいつまで続くのか?
ここは、かなり難しいところです。
例えば、「このあたりは戦国時代の戦で死んだ人が沢山いるんですよー」と言われても私の場合は殆ど気にしないです。そこまで遡ると大抵の場所で誰か亡くなってるはずなので(^_^;
今までは、個別に裁判所が判断していました。
ざっくりしたイメージにはなりますが判例を見る限り、自死の場合は10年前後、殺人の場合は20年~といった印象です。
あとは建物が取り壊されているかどうかも判断基準の一つになりますね。
賃貸物件はちょっと特殊かも
例えば、あるアパートの一室で自死された人がいたとします。
その次に借りる人(Aさんとします)には当然、心理的瑕疵を告知しなければなりません。
その後Aさんが引っ越して、Bさんがその部屋を借りたいと希望しています。
さて、Bさんにも心理的瑕疵を告知するんでしょうか?
大抵の不動産業者の場合、Bさんへは告知しません。
これをどう考えるかですが・・・
以前、私が受講した不動産講習会の担当講師(弁護士です)は、上記のようなケースの場合であっても告知は必要だと言ってました。
告知しなくても良いという条文も判例もないからだそうです。
しかし、その後にまた受けた講習の担当講師(別の弁護士)は、告知しなくても良いという判例があるから告知は必要ないと言ってました。
ん~これは悩むところですね。
確かに判例はありますが、この判例だけをもってして告知する必要なしと言い切れるのどうかは・・
ただ、日本は判例主義ですから「判例ではこうなっとる!」と言われると言い返せないですね。
もうしばらくするとガイドラインが出るそうなので、早く分かりやすい指針が出ると良いのですが。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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